Japanese
English
特集 痙性麻痺の治療update
運動療法
Therapeutic exercise for spastic paralysis.
田中 尚文
1
,
岡島 康友
1
,
木村 彰男
2
Naofumi Tanaka
1
,
Yasutomo Okajima
1
,
Akio Kimura
2
1慶鷹義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターリハビリテーション科
2慶應義塾大学リハビリテーション医学教室
1Department of Rehabilitation Medicine, Keio University Tsukigase Rehabilitation Center
2Department of Rehabilitation Medicne, Keio University School of Medicine
キーワード:
運動療法
,
痙性麻痺
,
他動的ROM訓練
,
反射
,
歩行訓練
Keyword:
運動療法
,
痙性麻痺
,
他動的ROM訓練
,
反射
,
歩行訓練
pp.299-303
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109459
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はじめに
痙縮は速度に依存した伸張反射の亢進によるとされてきた.これは,つまりα運動ニューロンの脱抑制であり,γ系の亢進,Iaへのシナプス前抑制,網様体脊髄路あるいは前庭脊髄路の障害などの関与が考えられている.最近では,痙縮の要素として,腱や筋の結合組織が短縮することや筋フィラメント間の連結橋の割合が大きくなることによる構造的要素あるいは非反射性要素も提唱されている1-5).例えば,筋を他動的に伸縮させると,直前の筋長や筋活動によって硬さが異なる,Thixotropyと呼ばれる筋の粘弾性特性にも留意しなければならない.これらの非反射性要素によって,筋紡錘の感受性が亢進することも容易に推定される6).
痙性麻痺に対するリハビリテーションにおいて,痙縮は,その異常な筋活動だけでなく,拮抗筋への過度の相反性抑制,ROM制限や疼痛と密接に関わり,リハビリテーションを阻害する一方で,立位や歩行時に麻痺筋の痙縮による筋収縮を利用することもある.痙縮に対する運動療法は,他動的に行う持続伸張とROM訓練が基本であり,モーターポイントブロックや薬物療法などと併用されることが多い.また,運動機能向上を目的として,筋力増強訓練,痙性筋と拮抗筋に対する筋電バイオフィードバック訓練や免荷でのトレッドミル歩行訓練も注目されている(表).Bobathらは,痙性筋のリラクセーションを得てから機能獲得の訓練を始めることを提唱しており,その一連の運動療法の効果が報告されてはいるが,個々の手技の効果を吟味していく必要がある.
本稿では,他動的ROM訓練に関するわれわれの知見を中心に,痙縮に対する運動療法について述べる.
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