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はじめに
近年,人の健康を考えていくうえで,身体的な問題だけではなく,「どう生きるか」といった“生命の質”に視点をおいたquality of life(QOL)が注目されている.保健医療の領域では,健康に関連したQOLにHRQL(health-related quality of life)という用語を用いている.HRQLが見直されきた背景には,慢性疾患患者の増加により,病気をかかえながら長い余命を生きていくことを余儀なくされた現代社会の一つの現象がある.したがって,完治が困難な慢性疾患患者の治療にあたっては,長い罹病生活を患者自身が満足できる幸福な状態で過ごせるか,すなわちHRQLをいかに高い状態で保持していくかが重要な課題となる.
呼吸リハビリテーションにおいては,American Association of Cardiovascular & Pulmonary Rehabilitationが科学的根拠に基づく(evidence-based)呼吸リハビリテーション効果にランク付けをしており,そこでは下肢トレーニング・呼吸困難のAランクに対し,QOLはBランク,心理社会的要素はCランクと下位に勧告している1).慢性閉塞性呼吸疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の一つである肺気腫は,長期の非可逆性の臨床経過をもち,労作時の息切れ感による行動の制限が患者のQOLを低下させると言われている2).われわれの先の研究では,肺気腫患者のHRQLには,肺機能,運動機能,日常生活活動(ADL)能力,栄養など,多くの因子が複雑に関与していた3).
本研究では,まず,肺気腫患者の運動機能,HRQL,精神心理機能(不安・抑うつ)の関係を検討した.さらに,呼吸リハビリテーション前の運動機能,HRQL,精神心理機能(不安・抑うつ)レベルと呼吸リハビリテーション後の運動機能の変化の関係を検討し,どのような症例に呼吸リハビリテーションがより効果的かを分析するとともに,呼吸リハビリテーション前後で精神心理機能は変化するのか,また精神心理機能の変化と運動機能の変化に関連性があるのか検討を行った.
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