一頁講座 神経心理学的症候
道具の強迫的使用 compulsive manipulation of tools
森 悦朗
1
1兵庫県立高齢者脳機能研究センター神経内科・臨床研究科
キーワード:
道具の強迫的使用
,
前頭葉
,
運動
Keyword:
道具の強迫的使用
,
前頭葉
,
運動
pp.779-780
発行日 2000年8月10日
Published Date 2000/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109297
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右手が眼前に置かれた物を意志に反し強迫的に使用してしまい,左手が意志を反映してこの運動を押さえる現象を道具の強迫的使用という1).患者の前に櫛を置いた場合,右手は意志に逆らってこれを持ち髪をといてしまう.道具を使用しないでいるためには左手が櫛を取り上げるか左手が右手を押さえなければならない.開始された行為は左手による抑制が成功するまで続く.両手を使用しなければならない物品や動作の場合,左手は抑制的動きをするのが一般的だが,右手に協力的な動きを示すこともある.道具の強迫的使用は病的把握の延長線上にあるもので,運動・行為の抑制機構の障害により本能的な把握運動のみならず学習された行為レベルの運動パターンが解放されてきたものと考えることができる.右手には必ず強い把握反射や本能性把握反応を伴っている.左手には脳梁離断症状(一側性観念運動失行,失書,触覚性命名困難など)を伴うことは少ない.
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