巻頭言
「障害」と「リハビリテーション」の体験
尾花 正義
1
1東京都立荏原病院リハビリテーション科
pp.503
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108985
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現在,私自身が「リハビリテーション(狭義の「訓練」)」を行っている.というのは,昨年末,スキーで骨折してしまったからである.30年来スキーをやってきて転倒したことはあったが,骨折したのは初めてである.右上腕骨大結節骨折で,当初は保存的治療が考えられたが,骨片が転位してしまい,ボルト固定による手術を行うことになった.スキーで転倒して骨折したこともショックであったが,医師になって初めて手術を受けることは,それ以上にショックな体験だった.術前の浣腸や術中・術後の尿道へのカテーテル留置などは,これまで患者には抵抗なく行っていた医療行為であったが,いざ自分自身がやられる立場になるといかに大変なことか実感した.利手である右手がうまく使えないため,当然浣腸は看護婦にやってもらわなければならず,実際に若い看護婦が行ってくれた時には恥ずかしい思いもした.また,術後麻酔から覚醒した直後は,腰が痛くても,尿道にはカテーテルが留置され右肩の手術部位にはドレーンが入っているために,一人で自由に身体を動かせず,本当に辛い思いをした.
さらにショックな体験もした.術後3週間の右上肢固定後,いざ右上肢を動かそうとした時,右肩はもちろん右肘にも関節可動域の制限(右肘は屈曲拘縮)を生じていたのである.しかも,肩甲帯周囲の筋の萎縮も生じていた.自ら「廃用症候群」を実体験することになったわけである.たった3週間の固定とたかをくくっていたが,このたった3週間で「廃用症候群」が生じたのだ.あらためて「廃用症候群」の恐ろしさを思い,その予防の重要性を知った.
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