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はじめに
社会保障制度やその他のリハビリテーションシステムで保障される「福祉用具,施設利用,障害者医療」等の具体的なサービスについては,すでにあまりに多く議論がされてきている.本稿では,それらを実体化するシステムの構造上の問題に焦点を当てて検討する,実際にはこれらの問題が障害者のリハビリテーションサービス効果を左右する影響力をもつといっても過言ではない.しかし,その影響力が目に見える形をとらないために,リハビリテーションサービスの利用の要否決定に直接関与する者でも,これらの問題の重大さに気づかない場合が多い.障害者,高齢者,児童(以下,障害者等)やリハビリテーション関係者が看過するのも止むを得ない.
ところで先般,厚生省から「社会福祉基礎構造の改革」(案)が「中央社会福祉審議会・社会福祉構造改革分科会」に報告され,公表された(平成10年12月8日).これは21世紀の超高齢化社会に向けて,新たな社会福祉体制づくりを目指したもので,①サービスの利用契約制度と費用の市町村助成,②利用者保護のためサービス利用の地域福祉権利擁護(ケアマネージメント)制度,③サービスの質の向上,④社会福祉サービス事業の多様化と市場性の導入,⑤都道府県・市町村による包括的な地域福祉計画の策定,を骨子としている.
厚生省は,これらを踏まえて,戦後間もなく公布され,現在の社会福祉システムの根幹となっている社会福祉事業法とその関連法・制度を大幅に改革しようとしている.また近年,障害者等の地域自立や社会参加促進の意欲が高まり,リハビリテーションサービスとその利用ニードも著しく増大してきた.しかし,その時々の問題状況を,長年場当たり的な手直しで凌いできた「戦後型社会福祉システム」も,すでに甚だしいシステム疲労を来し,そのため法・制度の部分的な改正程度では多様化,高度化するリハビリテーションニードに対処できない状態に陥っている.このままではニードとシステム間の摩擦はさらに拡大し,社会的矛盾の解決が一層困難な状況になってきた,こうした現実を一新するところに「社会福祉基礎構造の改革」(案)の狙いがある,これを機に高齢者障害者対策としての介護保険制度導入に止まらず,障害者等に対するリハビリテーションサービスの全体的枠組みを根本から変えることをも企図している.できるならば,その時点では,ここに取り上げる問題点も改善されていることを期待する.
しかし,現行システムの問題点は,今後,リハビリテーションサービスの全体的枠組みがどのように改革がされたかを検証する指標となりうるので,現時点でこれらを再確認しておく意義はあると考える.
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