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概念
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;ALS)は19世紀に報告されて以来よく知られた疾患であるが,原因はもとより有効な治療法の確立されていない進行性の神経系統疾患である.本疾患についてCharcot & Joffroy(1869)は次のように記載している.それによると,20~50歳の間に上肢筋萎縮と不全麻痺で発症する.次いで,下肢に痙性麻痺が見られ,遅れて筋萎縮が現れる.最後に球症状が出現し,2~3年の経過で球麻痺のため死亡する.しかしながら,知覚麻痺,膀胱直腸障害はなく,褥瘡は作らないものとしている1).その後,このような古典的ALSとは異なる症例が多数報告され,最近では,各種の運動ニューロンに病変のある疾患群のうち,障害される運動ニューロンの部位によって亜型分類がなされているが,ALSもその一亜型と位置づけられている(表1).
発症年齢は35~69歳1)とするもの,またさらに幅広く16~77歳(平均55歳)2)など,報告により異なる.吉田(1996)3)は,臨床統計学的にその平均値を54.4±11.1歳(男性54.0±10.8歳,女性55.1±11.5歳)とし,男女比は1.72:1と報告しているが,いずれも男性に多く発症し,遺伝的要素は少なく,罹病率に人種差が低い疾患であるとされている.
病因として,「遺伝」,「外傷」,「中毒」,「代謝・栄養」,「ウイルス」,「金属」など指摘されて久しいが,確実なものはない.地域特性として紀伊半島とGuam島がALS多発地域として確認されているが,10年以上の長期生存例の割合も多い4).
病理像は,下位運動ニューロンと錐体路の変性であるが,脊髄前角細胞では主に大型の神経細胞が脱落し,末梢神経でも径の大きい有髄線維の脱落をみる.脳神経核の変性は舌下神経核,疑核,三叉神経運動核,顔面神経核の順によくみられるが,動眼,滑車,外転神経核に変性をみることはほとんどない.
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