Japanese
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特集 中枢神経障害のリハビリテーション
各種疾患のリハビリテーション
多発性硬化症
Rehabilitation in Multiple Sclerosis.
小林 一成
1
Kazushige Kobayashi
1
1東京慈恵会医科大学リハビリテーション科
1Department of Rehabilitation Medicine, Jikei University School of Medicine
キーワード:
多発性硬化症
,
易疲労性
,
時間的・空間的多発性
,
温熱非寛容
Keyword:
多発性硬化症
,
易疲労性
,
時間的・空間的多発性
,
温熱非寛容
pp.1119-1129
発行日 1997年10月10日
Published Date 1997/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108502
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疾患の概念
多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)は,中枢神経系に起こる原因不明の脱髄疾患で,大脳,小脳,脳幹,脊髄,視神経の神経軸索髄鞘に,破壊と修復の機転が限局性に次々に生じる.そのため,多彩な神経症状(空間的多発性)が増悪と寛解を繰り返す(時間的多発性)ことが特徴で,診断は剖検により確定されるが,以上述べた特徴を,臨床症状,検査所見,CTあるいはMRI画像の組み合わせから同定できれば,臨床的にも確定診断できる.
発症は,成人に多く,子供や老人にはまれであり,やや女性に多いことから自己免疫機序の関与が考えられている.経過が長いこともあって,欧米では最も多く見られる神経疾患のひとつであり,米国の20代から50代までの生産年齢層が障害者となる原因の第3位を占め(第1位:外傷,第2位:関節炎),年間発症率は約8,000人と,脊髄損傷の約2倍である4,19).しかし,発症率には地域差があるため,欧米で人口10万人あたり30~80人の有病率が,日本では1~4人であり,わが国ではむしろ比較的少ない神経疾患である9).
特異的な治療法はないが,発症に免疫機能の異常が考えられていることから,免疫抑制剤や副腎皮質ステロイドの投与が行われる.しかし,現在のところ,薬物治療によって疾患そのものを治癒させることはできず,薬物治療の主体は個々の症状に対する対症療法で,これに加えてリハビリテーションがきわめて重要な位置を占める.
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