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はじめに
聴覚障害といっても,内耳の有毛細胞だけが働かなくなり,中枢へ向かう聴神経は正常な場合が多い.そのような人たちには,残存する聴神経に電気刺激を与えることによって,音に関する情報を中枢に伝える人工内耳が役に立つ.
1964年に米国スタンフォード大学のシモンズが,内耳につながる第8神経に6個の電極を入れて刺激を加えて,知覚される音の高さがどこの神経に電極を刺したかということと,それがその神経に与えるパルスの周波数によって決まることを明らかにしている.それ以来,聴神経への電気刺激法の研究が各国で進められ,1970~1980年代にかけて百花繚乱ともいえる多くの方式が提案された.
筆者自身も1984年に米国スタンフォード大学において8チャンネル人工内耳の研究に従事し,実際にボランティヤの聾者の内耳に電極を埋め込み,信号処理の仕方でどのように音声が知覚されるかを調べてきた.
当時,最も実用に近い人工内耳を実現していたのはオーストラリア・メルボルン大学であり,コクレア社製の22チャンネル人工内耳が1982年に適用されていた.その後はメルボルン大学とコクレア社の連携により実用化し,瞬く間に全世界に広まっていった.また,次々と性能の良い人工内耳へと改良していき,人工内耳と言えばコクレア社製のものを指すといっても過言ではない.
ここでは,コクレア社製の人工内耳において4つの方式による音声知覚能力の違いについて述べ,わが国における評価の結果,および子供に適用した場合の効果とその評価方法について触れたい.
なお,ここで述べる内容は1996年に開かれた「人工聴覚早稲田研究交流会」で議論されたことに基づいている.
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