巻頭言
福祉のまちづくりに想う
野村 歓
1
1日本大学理工学部
pp.599
発行日 1997年7月10日
Published Date 1997/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108414
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ADA法(アメリカ障害者法)や国際障害者年10か年行動計画の成果として,最近多くの自治体で福祉のまちづくり条例が制定されつつある.聞くところによると,47都道府県のうち7割近くが既に制定し,残りの自治体の多くが検討中であったり準備中である,という.これらの動きは,平成6年に制定された「高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称,ハートビル法)と連携して,わが国をようやく本格的なバリアフリー社会へ誘導するものと大いに期待されている.しかし,これまで熱心にまちづくり運動に関わってきている障害者や研究者の間では,法律や条例の制定で本当に高齢者や障害者にとって生活しやすいまちとなるのだろうかと疑問視されていることも否定できない.
その理由として,本来ならばすべての建築物や道路・交通機関が障害者や高齢者に安全・安心して利用できて初めて障害を持たない人と同じように行動できるのに,条例制定には行政側の論理が大きく働き,対象建築物を限定していることや不特定多数の市民が利用する一定規模以上の建築物が対象となることが多いのが現状である,市民としての立場から見れば,日常生活に必要な近くの商店,理髪店や美容院といったような小規模建築物が対象になったほうが生活の利便性がずっと高まり,それだけ評価されることがわかっているのに…….
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