連載 リハビリテーションとまちづくり
転倒予防とまちづくり
山田 実
1
1京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻
キーワード:
転倒予防
,
費用対効果
,
ポピュレーション介入
Keyword:
転倒予防
,
費用対効果
,
ポピュレーション介入
pp.775-778
発行日 2013年8月10日
Published Date 2013/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110215
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転倒予防の概要
65歳以上の高齢者になれば,1年間に3人に1人は転倒することになる.もちろん,高齢者といっても,その身体機能レベルによって転倒発生率は異なり,比較的元気な高齢者の転倒発生率は約20%,虚弱な高齢者では約45%となっている1).転倒・骨折は要介護要因の第5位に挙げられていることから,各市町でも積極的に転倒予防の取り組みが行われている.
2012年に報告されたコクランのシステマティックレビュー2)によると,転倒予防に有用とされるのは,① さまざまな要素を含んだグループエクササイズ,② さまざまな要素を含んだ自宅でのエクササイズ,③ 太極拳,④ 多要因への介入,⑤ ビタミンD摂取(ただしビタミンD不足者に対して),⑥ 住宅改修,⑦ 眼の治療,⑧ 遠近両用眼鏡の使用中止,⑨ 頸動脈洞過敏症の治療,⑩ 抗精神病薬の服用中止,⑪ 滑りにくい靴の使用が挙げられた.このように転倒予防には,決して運動機能面だけでなく眼機能や服薬調整,それに環境要因に対してなどさまざまな側面からのアプローチが有用とされている(表1).また,Sherringtonらは3),運動内容に特化したシステマティックレビューを報告しており,① 難易度に関係なくバランストレーニングには転倒予防効果がある,② 介入期間の合計で50時間以上のエクササイズを行うことで転倒予防効果を認めることを示した.このように運動を含むさまざまな介入には,転倒予防の効果があるということ,さらに適正な運動の種類や量なども報告され,各地で転倒予防教室を開催することが有用であることを支持している.
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