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はじめに
脳卒中患者において,排尿障害の併発はしばしば認められるため,正しい排尿障害の評価を行い,適切な尿路管理を指導することは社会復帰するうえで大切である.排尿障害の評価は,急性期の脳血管障害患者においては,脳卒中の予後を予想するうえで最も信頼できる指標の一つであると言われている.また亜急性期以降でもリハビリテーション訓練過程における機能回復と排尿状態の改善が一致する例も少なくない.このように排尿障害の評価はリハビリテーション訓練中の機能回復の予測の目安ともなり,さらに患者にとって最もふさわしい尿路管理法の選択をするうえでも大切である.どのような作用機序で排尿障害を惹起しているかを理解し,排尿障害の正しい評価を行うことは,リハビリテーション上有用かつ治療方針を決定するうえで重要なポイントであるといえる.
急性期を脱し当院に最近入院した脳卒中患者(脳梗塞:56名,脳出血36名)の入院時障害を調べると,尿失禁24%,次いで頻尿15%,排尿困難11%となっており,尿失禁が最も多く認められた.
頻尿とは,1日10回以上の排尿回数を認める時,また夜間3回以上トイレに起きる場合は夜間頻尿という.ICS(International Continence Society)による尿失禁の定義では,本人の意思に反し尿が漏れてしまい,社会的(行動範囲の制限,スポーツなどの制限),衛生的(尿臭,陰部のかぶれなど)に問題となる状態をいう.尿失禁の分類は,表1のように,特に急性期脳卒中患者では溢流性尿失禁が,慢性期では切迫性尿失禁,機能性尿失禁が多く見られる.排尿困難の訴えとしては,トイレに行ってもなかなか尿が出ない,腹圧をかけて出す,尿線が弧を描かない,時間がかかる,などである.
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