特集2 これまでの10年とこれからの10年—理学療法の発展と課題と夢
脳卒中の理学療法—学際的アプローチの確立に向けて
佐藤 房郎
1
Fusao Sato
1
1東北大学病院リハビリテーション部
キーワード:
システム理論
,
運動制御
,
運動学習
Keyword:
システム理論
,
運動制御
,
運動学習
pp.20-22
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200430
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今まさに変革のとき
本邦の脳卒中理学療法の変遷は,治療技術の中核を占めてきた神経生理学的アプローチに対する効果が疑問視され,システム理論と課題指向型アプローチへと変遷してきた.また,CI療法(constraint-induced movement therapy)や促通反復療法など,エビデンスに基づく新たな治療法が提案され発展を続けている.これらの変革は,脳神経科学や脳機能計測技術に裏づけられた脳活動の解明によるところが大きい.脳は階層的かつ並列に組織された構造により運動を制御しており,特定領域が障害されてもバックアップできるシステムを有し,身体の変化や活動により皮質は再編する.これは,システム理論の背景になっている.運動療法は脳の可塑性を望ましい方向に導く媒体として不可欠であるが,運動学習成立(スキル獲得)が前提条件となる.
もう一つの波は,「脳卒中治療ガイドライン2009」の発行により,理学療法の標準化が図られたことであろう.6年越しの改訂になる2015年版では,全般的に論文数が増え付記が解消されている.改訂ポイントでは,維持期リハビリテーション,麻痺側上肢の強制使用(CI療法),肩関節亜脱臼への三角巾や肩関節装具に関する推奨グレードが高くなり,課題反復トレーニングが推奨に挙がった.ガイドライン改訂のスパンは,脳卒中治療の進展の速さを物語っている.
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