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はじめに
脳卒中,頭部外傷患者の家庭復帰,社会復帰について考える時,患者自身の機能と,それをとりまく家族を中心とする環境に分けて考えることができる.この2つの側面をもとに,患者自身や家庭の意志により,行先が決定される.われわれは,家族を中心とした環境について,FAD(Family Assessment Device)1)や,家族の疾患に対する知識のTestを制作し2),検討を進めてきた.
今回は,患者自身の側の問題について検討した.第一には麻痺の程度や日常生活の自立度といった身体機能が重要であり,さらに家事動作や社会的機能を含めた手段的ADL3),機能的ADL4)についても,すでに多くの検討がなされてきている.しかし,患者が自宅復帰,社会復帰をし,安定した生活のできる条件はこれだけではない.それは身体機能,認知機能の先にある社会適応の問題であり,心理的適応や対人関係,問題行動として捉えられている.Livingstone5)は,家族の負担感について,疾患の重症度ではなく,患者の訴えが最も関連すると述べており,Thomsen6)やOddy7)も,患者の人格変化が介護家族にとって大きな精神的負担となっていると述べている.Kreutzer8)も職場復帰に関して行動上の問題が大きな因子であるとしている.また,社会復帰後ばかりでなく,リハビリテーション治療の継続9,10)においても社会適応の問題は重視されてきている.既にPrigatano11)やBen-Yishey12)は,社会復帰を目的とした社会適応のためのグループを中心とした治療を紹介しているが,心理療法に属する分野であり,わが国の身体障害者のリハビリテーションにおいては職域として確立していない13).
われわれは,脳損傷患者に対し,社会適応力を高めることを目標に2年前からグループ治療を行ってきた.しかし,この治療効果をどのようにみればよいかが常に問題となり,さまざまな試行を繰り返してきた.
NOSIE-30(Nurses' Observation Scale for Inpatient Evaluation)14)は,本来は分裂病の患者の看護婦による行動観察に基づく社会適応のスケールで,患者の症状の変化を鋭敏に捉えるとされている.30項目5段階評価で,サブスケールとして,社会適応,社会への興味,整容,易怒性,うつ,精神症状の6つがある.これらは,脳卒中,頭部外傷の患者において病棟でよく観察される行動の項目でもあり,一部改編すれば,適用できると考えた.
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