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はじめに
電気刺激による除痛法はかなり以前より行われていたが,1965年に提唱されたMelzackとWall1)のゲートコントロール説が刺激鎮痛法に一つの理論的根拠を備え,電気刺激による除痛法が活性化した.
Shealyら2)は,脊髄背面に直接刺激電極を装着し,脊髄後索を直接刺激する方法を報告した.しかし,この方法は電極の装着と除去に手術操作が必要であるため,くも膜炎,脊髄損傷,出血などの合併症が報告され,今ではほとんど行われていない.一方,ほぼ同時期に,下地ら3)は,持続硬膜外ブロックの手技を応用し,硬膜外カテーテル電極による経皮的硬膜外脊髄電気刺激療法(以下,硬膜外通電)を開発した.これはShealyらの方法に比べ合併症がほとんどなく,硬膜外麻酔法に習熟したものが行えば非常に容易である.
わが国でも1992年4月に疼痛除去用脊髄刺激装置植え込み術として保険診療が認められて以来,この方法は慢性疼痛疾患の治療法として定着し,現在,他の疾患群に対しても応用が試みられている.植え込み型脊髄刺激装置Percutaneous Inserted Spinal Cord Epidural Stimulation PISCES(R) systemを使用するのが一般的であるが,脊髄機能モニタリング用に市販されているカテーテル型硬膜外電極を用いても短期的目的や経済的理由などでPISCES(R)が用い難い場合などに有用である.
脊髄電気刺激の除痛機序については,①後索上行路の逆行性インパルスによる軸索側枝を介した抑制4),②下行性抑制系の賦活4-7),③視床など上位中枢における干渉作用8),④内因性オピオイド物質の関与9,10),⑤痛覚伝導路の(刺激頻度に関係した)伝導遮断11),などが提唱されているが,まだ完全には解明されていない.
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