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はじめに
痛みは身体に生じた侵害刺激に対する警報であり,重要な反応である.痛みの多くは,その原因である侵害刺激が除去されると消失する一過性のものであり,このような痛みを一般的に急性痛としている.急性痛に対して持続的な痛みを慢性痛としているが,慢性痛には痛みの原因を除去できない場合,原因を除去したにもかかわらず,その後も痛みが持続する場合,そして原因不明の場合がある.慢性痛において,一般的な鎮痛処置による効果が不十分なものを難治性疼痛としている.
難治性疼痛の原因のひとつとして持続痛による痛みに対する感受性亢進があげられる.つまり,侵害刺激ではないような軽微な刺激に対しても痛みを感じたり,何の刺激もないのに痛みを感じたりするような状態が引き起こされる.臨床上,神経因性疼痛(neuropathic pain),反射性交感神経性萎縮症(reflex sympathetic dystrophy;RSD),および交感神経依存性疼痛(sympathetically maintained pain;SMP)などがこのような病態と考えられる.
癌性痔痛は,その病変の進行に伴う侵害刺激の増強変化や,それに対する手術療法,放射線療法や化学療法など(表1)により生じる痛みを考えるうえから,単なる慢性痛と考えることはできず,急性痛の連続と捉える必要がある.また,上記の難治性痔痛に加えて,筋・筋膜痛症候群(myofascial pain syndrome)や心因性疼痛を合併することが多い.
われわれが経験する癌患者の難治性疼痛という場合は,非ステロイド性抗炎症薬や弱麻薬性鎮痛薬による鎮痛が得られず,強麻薬性鎮痛薬であるモルヒネを使用しているにもかかわらずその副作用のため十分な増量ができない場合,耐性形成による場合,そしてモルヒネの効かない疼痛を合併している場合である.よって,ここでは中枢性鎮痛薬,特にモルヒネを中心とした作用,副作用およびその対策とモルヒネの効かない癌性疼痛に用いる各薬物の使用法について説明する.末梢性鎮痛薬などの使用法に関しては他を参照していただければ幸いである.
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