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はじめに
現在のわが国では,一般的には性=行為と考えられており,しかも性については男性の視点に立った表現や考え方が多くを占めているように思われる.一方,女性の側も,最近では変化しつつあるとはいえ,女性自らの性を自覚しないまま独自の価値観を持てず受け身的である.
性は人間の存在そのものであり,性の喜びや満足は単なる男女の性行為のみで得られるものではなく,最小単位の男女それぞれが他の人間と関わり,社会の構成メンバーとして主体的に生活を営むことにより,確立したものとなり,継続して,充実・満足したものとなる人間関係の一種である.したがって,年齢の差,性別,障害の有無などによって差があるものではない.性を考えるにあたっては,このような認識が必要である8).
以上のことが認識されていない性的に未熟な社会では,特に男性の場合,勃起現象が障害されると,これが即男性失格につながるとする考えが強く,男性が脊髄損傷になった場合,精神的不安とあいまってその衝撃は大きい.女性の場合も,性行為そのものが受け身的であるためか,性行為が麻痺した身体に悪い影響があるのではないか,夫にすまない,麻痺しているため夫が満足できないのではないか等,精神的不安が強いようで,生活全体が消極的な傾向になる15,20).
二分脊椎者の場合にも,脊髄および末梢神経に障害があるためやはり性機能には重大な影響があり,さらに先天性の疾患であるための問題,この疾患の特殊性から水頭症の問題,歩行の問題,排尿の問題など,そして生活環境(母子関係,教育環境など)などにより,やはり性機能には大きな問題が生じてくる13).
ここではまず,脊髄損傷者の性機能障害とこれに対する対処の実際について述べ,後半では二分脊椎者の性機能障害について概説する.
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