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はじめに
1946年はvon Neumanが初めてコンピュータの原形であるENIACを完成させた年であり,これは米国のリハビリテーション医学界において専門医制度が発足(1947年)したのとほぼ同時期にあたる.それから約半世紀を経た現在,どちらの分野がより進歩したかを比較すること自体には意味がないが,当時としては「スーパーコンピュータ」であったENIACが現在のプログラム電卓程度の性能であったことを考えると,コンピュータ技術の進歩は驚異的ともいえる.さらに,1975年にJobsらがApple computerTMを完成させて以来,パーソナルコンピュータは使いやすさという点でも飛躍的な進歩を遂げており,誰でも簡単に利用できるという本来の意味での「パーソナル」コンピュータの姿がようやく実現されてきた.
医学においてデータベースが注目されるようになった背景には,このようなコンピュータの長足の進歩があることはいうまでもない.そしてコンピュータを利用して,種々の臨床データをアナログではなくデジタルデータとして入力するためのデータベースを構築しようと考えるのは,研究者として当然の発想である.実際に1970代以降,多くのデータベースが開発されたが,アメリカ・リウマチ学会のStandard Database for Rheumatic Disease1)およびその発展形であるARAMIS(The American Rheumatism Association Medical Information System)2)は,組織的なプロジェクトとして先駆的に開発されたデータベースである.そして,賛否両論のなかで精力的にワークショップ等を重ねて内容を改善していった開発の歴史は,今後のリハビリテーション分野におけるデータベースの開発にとって参考になるものと思われる3-6).
米国のリハビリテーション分野においては,UDS(Uniform Data Set)7,8)がもっとも整ったデータベースとして利用されている.UDSは22の項目からなるリハビリテーション患者のためのデータベースであり,患者の診断,入退院日,住所,人種,社会的背景,機能障害,リハビリテーションにかかる費用,Functional Independence Measure(FIM)などの項目から構成されている.すでに,1993年までに12万例余りの患者データが蓄積され,その解析結果は毎年報告されている9,10).
一方,わが国では,多施設における共同研究を目的として組織的に開発されたリハビリテーションデータベースは存在しない.そこで本講座では,筆者らが1991年以来データベース開発に携わった経緯から考察した,優れたデータベースの開発条件等について述べた後に,実際に臨床および研究において利用している脳卒中リハビリテーション患者のためのSIAS/FIMデータベースを紹介する.
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