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はじめに
筆者は脳卒中患者を対象として運動障害者の心・血管・呼吸系のフィットネスの評価と,それを改善するための運動処方の検討を行ってきたが,これまでの検討結果から,以下に述べる結論が得られている.
1)脳卒中患者の心・血管・呼吸系のフィットネスの指標として,心拍数が100または120拍/分に対応する酸素摂取量(各々Vo2-100,Vo2-120と略す)やanaerobic threshold(AT)が有用である1,3).
2)脳卒中患者のVo2-100またはVo2-120は,同年齢層の正常者のそれと比較して統計学的に有意に低下している1).
3)脳卒中患者のVo2-100の低下の要因は,心拍数が100拍/分に至る運動時の1回心拍出量の低下である2).
4)脳卒中患者の心・血管・呼吸系のフィットネスが同年齢層の正常者のそれに比較して低下している原因としては,
①脳卒中患者の活動性が同年齢層の正常者のそれに比較して統計学的に有意に低下していること
②長期の活動性の低下,例えば安静臥床によって運動時の1回心拍出量が著しく低下することが安静臥床実験によって明らかにされていること
の2点から,発病直後からの長期にわたる活動性の低下による心・血管・呼吸系のフィットネスの廃用性変化が最も考えられる1,2).
5)短期間のATレベルでの全身持久力訓練が,脳卒中患者のATの改善をもたらす4).
ところで,5)のATレベルでの全身持久力訓練の効果に関する検討では,対象例に対して,まず4週間の通常の理学療法(PT)と作業療法(OT)を行い,続く4週間ではPTとOTに加えてATレベルでの全身持久力訓練を施行した.通常のPTとOTのみを施行した期間ではATの改善が認められなかったが,ATレベルでの全身持久力訓練を加えることによってATに有意の改善がみられたことから(図1),ATレベルでの全身持久力訓練は脳卒中患者のATの改善に有効であると結論した.
しかし,この研究のプロトコールの問題点としては,ATレベルでの全身持久力訓練を加えた後半の4週間でのATの改善には,全身持久力訓練による改善に8週間施行したPTとOTによる改善が加算されている可能性のあることが挙げられる.
そこで,本研究の目的は,脳卒中患者をATレベルの全身持久力訓練を行った群と行わなかった群との2群に分け,ATレベルでの全身持久力訓練が脳卒中患者のATの改善に有効か否かを再検討することである.
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