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はじめに
脳卒中の上肢障害は,下肢障害と比較すると,同じ程度の麻痺であっても実用性が低い.そのため,重度の麻痺により廃用手と判断されてしまうと,リハビリテーション専門病院においても十分な対応がなされず,作業療法が行われないことさえある.
臨床場面においては,慢性期の脳卒中患者の麻痺側上肢に二次障害を合併している割合は高く,そのほとんどは患手管理が定着していない.こうした二次障害を予防するための患手管理の重要性を指摘した報告1,2)はあるものの,その具体的なアプローチ内容や効果について言及したものは少ない.
また,これまでの上肢に対する作業療法の不足を訴え,麻痺側上肢の機能回復に執着している患者も多く3),そのために通院治療を終了できず,新たな生活へ踏み出すことのできない例も少なからず経験する.Broeksら4)は,脳卒中発症から4年を経過した片麻痺患者でも,67%で上肢機能の改善期待が強く,障害受容が進んでいないことを指摘し,医学的リハビリテーション終了後も障害受容について特別の注意を払うべきであると報告している.Wyllerら5)は,脳卒中発症1年後の片麻痺患者の主観的なQOLの調査を行い,麻痺側上肢の運動機能障害の程度が主観的なQOLに最も大きな影響を与えることを指摘した.しかし,impairmentレベルの改善には自ずと限界があり,障害受容やQOL向上のためにいつまでも機能訓練を続けるわけにはいかない.重度の麻痺がありながらも,麻痺の改善に固執せず,一定の満足感をもってQOL向上を目指すことは困難なのであろうか.
今回われわれは,①患手管理指導の効果および問題点,②麻痺側上肢に対する障害受容,について,調査結果をもとに考察し,急性期から慢性期に至る片麻痺上肢に対するアプローチ方法を再検討した.
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