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はじめに
リハビリテーションにおいて,障害受容に対するアプローチは機能障害,能力障害,社会的不利に対するアプローチとともに非常に重要である.脳卒中患者の障害受容を検討する場合,脳の器質的損傷に伴う抑うつ,無関心,知能低下,失語症などにより了解的関連が不明確となるため心理療法の対象外とされてきた.従来よりの研究も脊髄損傷患者2,5)を中心に行われ,脳卒中患者に対する取り組みは少ない.しかし,多くの脳卒中患者は障害を受けることによる心の不安をもっており,たとえ了解が不明確としてもなんらかの感情は動いているものと考えられる.
小山1)は,脳卒中患者の心理的アプローチについて,「心理療法において心理的平衡状態をより多く維持しようと奮闘努力している脳障害者を一貫して支持し,脳障害者に内在するある対象に対する矛盾した両価的感情を顕在化し,否定的感情の自己了解から肯定的感情の自己了解へと情動体験を深め,自己洞察をはかろうとする一連の過程を援助していく」こととしている.しかし,対象者は知的障害を伴うことが多く,また自発性の乏しさもあって治療意欲が低いことや,社会・経済的不安にさらされていることから心理療法の前提条件を満たさない者が多いとし,その限界を指摘している.このような状況のうえに立って,小山1)は「病気に伴う抑うつ反応の変容を求めること,さらに自己実現傾向を支持し心身両面において,他律から自律へ,依存から独立へという方向に向けて,脳障害者独自の可能性を切り開いていく一連の過程を援助することにおかれる」とカウンセリングの目的を述べている.
このように脳卒中患者の障害受容へのアプローチは,心理的側面だけでなく,自己実現や自立への援助などの社会・経済的側面についても検討する必要があるものと考えられる.
本稿では,20例の自験例(表1)7)を中心に脳卒中患者の障害受容の臨床的特徴を解説する.
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