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はじめに
高位頸髄損傷患者(C2~C3)では横隔膜をはじめとする大部分の呼吸筋群が障害され,気管切開下で長期間人工呼吸器にたよらざるを得ない.人工呼吸器管理下では気道確保と上気道からの分泌物や異物の肺内侵入防御の目的で気管切開チューブ(以下,気切T)のカフを膨らませる.したがって患者は随意的に発声できず,音声言語を用いたコミュニケーションは不可能となる.この場合のコミュニケーション手段として一般的には患者の残存機能を利用した環境制御装置(ECS)3)や口形を読む方法が知られている.しかし前者には患者の熟練度,周辺機器の設置などの問題があり,後者には医療スタッフを始め家族の長期間の慣れが必要となる.これらの点でいずれの方法も実用性に欠け患者のコミュニケーションの範囲は狭まるばかりである.
一方,最近の気切Tには図1(左)のように送気管を装備し,圧縮空気や酸素を強制的に上気道に送り込み,一時的に発声させるものがある2).
その他,人工呼吸器管理下の筋ジストロフィー患者にカフがないタイプの気切Tを装着し,気管壁との隙間(leak)を作ることで,患者に吸気時(人工呼吸器からの酸素の送り込み時)の発声を可能とさせる方法1),またカフなし気切Tに図1(右)のような長楕円形のスリットを開けバルーンカテーテルを適時,声門下気道に挿入して気道閉鎖させ誤嚥物の肺内侵入を防止する方法もある4).いずれの方法も人工呼吸器管理下での発声を可能としているが,特に後者では安全性への配慮もなされているといえる.しかし日常の臨床場面ではその操作が煩雑であることは否めず,実用性には問題を残す.
以上の問題に対しわれわれは気切Tに新しい工夫を行い,呼吸器下の四肢麻痺患者に用いたところ良好な結果が得られた.そこで本気切Tを紹介すると共にその安全性,実用性に関し若干の検討を加えて報告する.
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