特集 脊髄損傷のリハビリテーション
脊損患者の尿路管理
近藤 賢
1
1関東労災病院泌尿器科
pp.11-13
発行日 1967年11月9日
Published Date 1967/11/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100057
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緒言
脊損患者に必発する合併症として,膀胱直腸障害があることはよく知られている。すなわち膀胱障害としては尿閉ないし尿失禁,直腸障害としては便秘である。このような膀胱直腸障害は受傷直後から発生し,種々の回復訓練の間も継続し,社会復帰が可能となってもやはり無視することはできず,結局死ぬまで縁を切ることはできない。特に膀胱障害は単に膀胱にたまった尿がうまく排出しえないという尿閉だけではなく,必ず尿路感染症を合併し,直接あるいは間接に腎臓の機能を低下させ,腎不全は尿毒症から死亡という段階に進展してゆく。すなわち膀胱障害は腎臓障害(腎不全)を併発し,患者の寿命を左右する重要な原因となる。したがって脊損患者の受傷直後からの治療においても,回復訓練の時期においても,社会に復帰した後においても,その腎臓および膀胱の機能を維持し,改善させ,少なくとも悪化させぬように注意すること―脊損患者の尿路管理は患者の寿命を長くし,社会人としての活動を十分にかつ長期間持続するために欠くことのできぬ重要性をもっている。
このような意義をもつ尿路管理には,泌尿器科の医師が主役を演ずることはいうまでもないが,また脊損患者に直接に接する時間の長い回復訓練や社会復帰のための職能訓練に当る人々が尿路管理の大略をよく理解し,それに協力してもらうことも尿路管理を実際によく行なってゆくためには欠くことのできぬ重要性をもっている。
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