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はじめに
リハビリテーションとは「全人間的復権」を指し,障害者が社会復帰して初めて「リハビリテートできた」と言える.したがって,脊髄損傷者にとっては,病院退院後に最も重要で困難なリハビリテーションの「仕上げ」がスタートするわけで,そのためには住宅・在宅指導へのリハビリテーション・スタッフの協力が不可欠である.
人が主と書いて「住まい」であり,人間の生活の基礎となるのが住宅である.住宅はそこで生活する人間のために必要な空間と,そこで使用される生活機器・器具や住宅設備機器の占める空間から成り立つ.障害者の住宅には特別な配慮が必要で,近年,建築の立場から障害者の生活環境の改善をはかり,リハビリテーションを阻害するすべてのバリア・障壁を除去するバリアフリー・デザインの研究も行われている.
障害者にとっての住宅は「休息の場」としての住宅の本質と同時に,同居の家族も使いやすいこと,安全性・プライバシーの確保,日照・採光・換気が良く衛生的,機能的,維持管理のしやすさなども必要で,症例によっては仕事場ともなりうる.
障害者住宅の留意点としては,目的を明確にする,現在と将来の的確な能力評価,移動手段,ADL自立に対する意思,家族の協力態勢,家族との日常生活の統合などが重要である.実際の改造に着手する前に,本当に改造が必要か,訓練は十分に行われたか,介助・補助具・自助具などで代替できないか,能力評価は十分に行われたか,建築上の検討をしたか,関係法規,家族の了解と協力,経済的問題などを検討すべきであり,主治医・リハビリテーション医・PT・OT・ナース・MSWのチームに建築専門家を加えてカンファレンスを持つべきである.同じ脊髄損傷と言っても,頸髄損傷,胸腰髄損傷と損傷髄節レベル,完全麻痺と不全麻痺,性・年齢などにより対応は著しく異なり,各々の症例にあわせた応用問題としての取り組みが必要である.
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