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講座 身体障害者の呼吸・循環機能・1【新連載】
脊髄損傷者
Respiratory and circulatory system for persons with spinal cord injuries.
荒川 英樹
1
,
中村 健
2
,
田島 文博
2
Hideki Arakawa
1
,
Takeshi Nakamura
2
,
Fumihiro Tajima
2
1医療法人黎明会北出病院リハビリテーション科
2和歌山県立医科大学リハビリテーション医学教室
1Department of Rehabilitation Medicine, Kitade Hospital
2Department of Rehabilitation Medicine, Wakayama Medical University
キーワード:
脊髄損傷
,
呼吸機能
,
循環機能
Keyword:
脊髄損傷
,
呼吸機能
,
循環機能
pp.43-48
発行日 2007年1月10日
Published Date 2007/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100447
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はじめに
わが国における脊髄損傷(以下,脊損)の発生頻度は,年間平均人口100万人当たり40.2人であり,1年間に約5,000人の脊損者が新たに生じていると推測される1).損傷高位では,頸髄損傷(以下,頸損)と胸腰髄損傷の比はおおよそ3:1となっており,C4,C5,C6で頸髄損傷者全体の約半数を占めており,頸髄ではC4,胸腰髄ではT12がピークである.
一般に,脊損者の障害は,運動麻痺と感覚障害を主として呼吸・循環機能にまで波及しているため,身体活動量が制限されている場合が多い.日常生活活動量が比較的保たれる脊損対麻痺者であっても,通常の車いすを使用しての生活では心肺機能の維持が難しいと言われている2,3).さらに心理面から,障害ゆえ運動を積極的に行おうという意欲の低下がみられ,ますます活動性が低下し,呼吸・循環機能が低下するという悪循環に陥りやすい4).
また,全国労災病院脊損データベースによると,脊損者において退院時FIM(Functional Independence Measure)の「歩行」における点数が低いものほど入院中の呼吸器感染症発生率が高かった5)との報告もあり,床上動作や車いす,歩行などの活動性の向上が体位ドレナージや呼吸・循環動態の順応や効率化を促進し,呼吸・循環系合併症の発症や予後を改善することが考えられる.
したがってわれわれは,脊損者における呼吸・循環動態を十分に理解し,むしろ積極的に継続的な運動を脊損者に対し推奨することが望まれる.そこで今回,脊損者における呼吸・循環動態を,健常者と比較することにより,とくに運動時応答の特徴を含め概説することとした.
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