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はじめに
老人のリハビリテーションについて考えるとき,老化という問題を避けて通れない.老化に逆行がないとするならば,せめてその進行を抑えること,そこにリハビリテーション的アプローチがないか?handicapを少なくし,disabilityを軽減する手だては,老人個人の問題ばかりではなく,社会体制の役割でもあり,老人のリハビリテーションの特徴をここに求めるとすれば,その手だてや社会システムがそれを支える法体系ということになる.
このように考えてみたとき,最近急速に法体系に定位し始めた介護というサービスは,リハビリテーションに含まれるのかを議論しておく必要性がある.老人福祉制度には在宅老人福祉対策事業として要援護老人対策事業がある.その中の家庭奉仕員派遣事業運営要綱に奉仕員(いわゆるホームヘルパー)のサービス内容として,①介護(食事,排泄,衣類着脱,入浴,清拭・洗髪,通院他),②家事,③相談・助言の3項目が示されている.これらの事項を老人のリハビリテーションを支える一部として考えるべきかどうか.仮りに含まれないとしても,新しく身分制度が確立した介護福祉士の業務はどうなっているのであろうか?「社会福祉士及び介護福祉士法」における定義において,介護福祉士は上記介護とともに対象者本人および介護者に対する指導も行うとされ,その養成指定基準にリハビリテーション論なるものも必須科目になっている.そこに介護サービスも老人のリハビリテーションを支える制度の1つとして考えるべきであるという意見もあるはずである.基本的には看護と介護の違いは何かという問題にもかかわってくるのであるが,この論議をここで展開する余裕はないので,一応介護サービスのうち機能回復や積極的維持を目標にした部分をリハビリテーションとして話を進めることにする.
老人のリハビリテーションを支える法体系を解説するにあたり,何歳以上を老人とするか.わが国の社会保障体系全体の中で老人のリハビリテーションに関する問題を法制度として捉えるには,まず社会保険部門として,各種医療保険制度(難病や精神障害等の国の特定助成対策を含む),年金制度,労働保険制度(労災保険・雇用保険),社会福祉部門として老人福祉制度(身体障害者福祉制度も関係がある),保健部門として老人保健制度,さらに国家扶助制度としての生活保護法まで,広い範囲を一応考えてみなければならない.年齢が決められているものもあれば,年齢と関係のない制度理念を持っている体系があるが,限られた誌面で重点的に解説するために,65歳以上の対象者ということにして,制度的に老人保健法,老人福祉法を中心にした取り上げ方をして高齢者保健福祉推進10か年戦略にもふれながら解説したいと思う.
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