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Ⅰ.はじめに
一般に,リハビリテーションという観点,すなわち静的状態における医学ではなく,あくまで社会復帰を目的とした動的状態における医学という面から老人の心肺機能をとらえようとする場合には,単にベッド上の安静状態においてその患者の諸機能が正常限界内にあるからといって,それのみで事足れりとするわけにはいかない.あくまでも,日常生活の場におけると同程度の負荷を与え,それに対する耐容度によって評価し,それに応じて過不足のない適正なリハビリテーション(以下リハと略)プログラムをすすめていくことが,リハの分野において心肺機能を考える上でのもっとも望ましい姿であることは論をまたない.従って,いかなる場合においても,(1)Physicalにみたその患者の最終ゴールはどこに設定されるか(車椅子生活か,家庭復帰か,社会生活への復帰かなど),(2)心肺機能面よりみた場合に,上記のゴール設定は果たして適正か,(3)それを知るための等価(equivalent)の運動負荷法はいかなる方法(主として上肢負荷か,あるいは下肢負荷か)を,どの位の量負荷するのが適当か,(4)その際の評価のパラメターは何をえらぶべきか,の4点を常に考慮しなければならない.とくに老人においては,青壮年期より以上に個体間における差異が著しく,ただ単に年齢による平均的な当てはめ方は決して通用しないことを知っていなければならない.さらに,老人において注意すべきことは,運動負荷における許容度の幅がせまいことである.従って,常に再評価をくりかえしながら,プログラムを修正してゆくきめこまかい配慮が要求される.この点も老人リハにおける大切な事項の1つである.以下,各疾患についてリハ上に遭遇するいくつかの問題点をひろってみることにしよう.
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