書評
Lerner RM, Busch-Rossnagel NA 編,上田礼子 訳―生涯発達学 人生のプロデューサーとしての個人
本田 哲三
1
1東海大学医学部リハビリテーション学
pp.140
発行日 1991年2月10日
Published Date 1991/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106729
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従来,リハビリテーション医療においては,脳性麻痺児ら小児の発達的変化の関心は高かったものの,青年期以降の発達については必ずしも注目されていなかった.しかし,近年はエリクソン(「幼児期と社会」)やレビンソン(「人生の四季」)らの影響から,成人-中年期の人生をもライフサイクル上の発達段階と理解する立場は一般的になりつつある.例えば,障害後の心理的受容の問題を考えるとき,患者の受傷年代が重要な要因の一つとされる点は周知のとおりである.
本書に貫かれている一貫した思想は,各個人の発達は従来考えられていたように先天的な遺伝形式に支配されるのでも,また環境にその決定要因を還元できるものでもないことである.つまり,人間は生下時より老人に至る一生のあいだ,常に望ましい変化を促進し,環境をもつくりかえていく主体的かつ可塑的な存在であるとする「文脈-相互主義」パラダイムであり,これが「人生のプロデューサーとしての個人」という副題の意味となっている.
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