寄書
伊藤礼子氏の「人間の眼についての光学的考察」を読んで
大島 祐之
1
1東京医歯大眼科
pp.96-98
発行日 1959年4月15日
Published Date 1959/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906069
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本誌に表記の論文が4回に亘つて掲載されたが,御依頼により専門的立場から見た批判を記すことにする。
伊藤氏の論文を読んで第一に感ずるのは,自然科学的な考え方を忘れておられることである。即ち自然科学においては常に客観的な事実や実験結果を基礎として論を組立てて行くのが本道であり,もしも研究者の主観が入る場合には大きな誤ちを招く危険を伴う。感覚という主観的要素を無視していては実験が成立しない部門においては,従つて第一歩から誤まる危険を孕んでいる。故に実験結果の解釈は,多角的な実験や事実,知見に基づいて,殊更に慎重に行わなければならない。そのためには充分な基礎知識が必要であり,さもないと著るしく真実性に乏しい解釈を下す結果となり,論ずる所は妄想の類に堕する恐れがある。
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