書評
―上田礼子(著)―「生涯人間発達学」
今川 忠男
1
1旭川児童院
pp.254
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104518
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本書は,従来の発達学が乳幼児から成人に至るまでの過程をとらえていたのに対し,生命誕生から死に至るまでの変化を発達として見ていく必要性を説いた本邦初の生涯発達学の教科書である.すでに欧米では,“Across the Life Span”というシリーズで様々な機能の発達を人間の生涯にわたる経過で解説した書籍が出版され,理学療法上の教育,臨床,研究に引用されている.本書をきっかけとして,わが国でも理学療法関連機能の生涯発達学の確立と発展を期待したい.
総論と各論7章からの構成で保健医療専門職,学生を対象とした教科書を目的として執筆されている.これを現在の理学療法学科学生の「人間発達学」教科書として検討してみると,総論の第2節,第4節は人間に対する全体的かつ包括的視野の獲得という教科目的に適した内容であると感じる.特に第4節の「発達と発育」に紹介されているPortmanやHomeの説明,また家庭―社会―文化―歴史的環境における個体発達過程の把握で有名なBronfenbrennerの主張などは,書評者も「障害児・者のための人間発達学」の中で講義してきた経緯があり,意を強くしている.
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