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はじめに
1895年,Roentgen WCがX線を発見すると直ちにその診断への利用の可能性が注目され,翌1896年には既にダウン症候群の骨のX線変化など,いくつかの報告が現れている.その後の技術の進歩により,新しい機能をもったX線装置をもとに種々なX線検査法や造影法が考案され,この眼に見ることができず,しかも人体を透過するX線の臨床医学における有用性は,“Keine Medizin ohne Rontgenstrahlen”(X線なくして医学なし)という言葉さえ生んだ.
ラジオアイソトープを医療に応用する核医学は,第二次世界大戦後に原子力平和利用の一環として急速に発展した.免疫アッセイなどのほか,画像として形態だけでなく機能や代謝異常の診断にも用いられているが,空間分解能や鮮鋭度は十分とはいえない.
画像診断の歴史において画期的なX線CTは1973年に発表され,従来の放射線検査では得られなかった脳実質そのものを描出,組織異常をX線吸収値(CT値)で表現し,さらに重なりのない横断断層像を可能とした.
このCTのコンピュータによる画像再構成の原理をシンチグラム装置にとり入れたのが断層シンチグラフィで,これにはPET(positron emission computed tomography,陽電子断層法)とSPECT(single Photon emission computed tomography,シングルフォトン断層法)がある.PETに利用する核種の半減期は極めて短く,病院内に小型サイクロトロンをもち,放射性薬剤を自家製造する必要があるため設備と維持費が高額となる.現在,国内でPETが可能なのは10施設ほどである.
画像診断学上の最大の発明といわれるMRIは,1980年代から飛躍的な進歩を示しつつあり,運動器系の診断にも大きなインパクトを与えている.これらの画像診断の発達は近代医学進歩の縮図ともいえるが,ここではMRIを中心に解説したい.
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