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はじめに
高齢者の増加に伴い,いわゆる寝たきり老人が増加し,1985年には約60万人に達したと推定されている1).また高齢の脳卒中患者は,たとえ早期から十分なリハビリテーションを行っても,歩行不能にとどまる患者が多い2).このようにADLレベルの低い歩行不能な脳卒中患者の自宅退院が困難なことは先に本誌に報告した我々の報告はじめ3,4),Shafer5),Greenberg6),奥川7),林8,9),白野10),等の報告に示されているが,地域,患者の特性,病院の特性によって,自宅退院率が異なり,地域や年度の異なる集団での結果の比較は困難である.
我々の前回の報告では,都市型中規模一般病院である代々木病院の患者の分析を行い,脳卒中患者が自宅退院するための3条件として,①リハビリテーションにより,歩行が自立すること,少なくとも,ベッド上生活が自立すること ②もし,起居移動動作が全介助にとどまった場合は,最低限常時介護者1人プラス補助的介護者1人が確保できること ③全介助にとどまった場合,往診・訪問看護等の在宅医療サービスが受けられること,および病状が悪化した場合,再入院(「間けつ入院」)が可能であることが示された3).代々木病院のその後の脳卒中患者の自宅退院率が低下している印象があったので,退院先の動向を調査した結果自宅退院率の明らかな低下をみとめた.この要因としては患者の重症化を当然考慮しなければならないが,ベッド上自立以上の比較的軽症の患者でも自宅退院率が低下した可能性もあり,また介護者が減少したこと,長期療養施設が増加したこと,等も考えられた.これらを考えつつ分析を行い,興味ある結果を得たので報告する.
代々木病院(1985年270床)は,1978年30床のリハビリテーション病棟を開設し,1980年救急指定病院の認定を受け,理学診療科は1986年11月現在において,医師2名,看護婦15名,看護助手3名,クラーク1名,(腎疾患患者病床15を含む),理学療法士3名,作業療法士2名,医療ソーシャルワーカー1名により,脳卒中発症早期からの医療・リハビリテーションを行っている.リハビリテーション病棟開設前から,総合的なリハビリテーションの立場から,必要な機能訓練,ADL訓練と援助を十分行い,機能的に安定期にはいると患者家族の希望を尊重し適切な退院先を選び,自宅退院を希望する患者家族には医療チームとして十分な介護指導と在宅サービスの活用を行ってきた.
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