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はじめに
発達とは年齢増加に伴って,構造や機能が分化,複雑化,多様化することであり,成熟と経験の総和である.従来の発達に関する研究は,まず変化の順序を検討し,それが何時出現するかを問題にした.変化の時期を記述するのには年齢が利用され,段階(stage)の概念も導入された.そして各段階における理想型(ideal type)が考えられるようになった.最近の傾向としては,変化がどのようにしておこるのか,何が変化をおこすのかに関心がむけられている.正常発達には,定まった方向性があり,理想型の発現の順序と発現時期は一定である.発達障害は,このような継時的変化の中でみられる異常であり,「遅れ(delay)」と「病的発達(maldevelopment)」に分けられる.「遅れ」とは,発現の順序は正常発達と変わりないが,発現時期が遅れていることである.「病的発達」とは,継時的変化の過程が正常発達の過程から逸脱することである.発達診断は,理想型の順序とその発現時期から発達基準(規範,norm)をおき,「遅れ」や「病的発達」がないかを診断することである.
人間の運動行動は運動(movement),動作(motion),行為(action)の3レベルに分けられる.運動発達を分析する場合は,運動と動作が分析の対象になる.運動を扱うのは運動学(kinematics)と運動力学(kinetics)である.運動を空間での質点位置の時間的変化として扱うkinematicsでは,運動は身体各部位の関節角度の変化としてとらえられ,各関節角度の組み合わせは1つの運動パターンとして表現される.運動を筋活動による張力と重力などの外力との関係でとらえるのはkineticsである.動作は書字動作や移動動作などのように,運動によって具体的に行われる課題(task)との関係で行動の分析を行う時の単位となる.
運動発達の分析は運動と動作の発達的経時的変化を分析することであるが,運動発達の分析を通じて中枢神経系の発達の状態を知ることが可能となる.
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