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はじめに
近年,障害児の早期発見・早期療育のニードが高まり,その実践報告も数多く見られるようになった.特に,生後直後に確定診断されることの多いDown症児(以下DS児と略す)に対しては,0歳代という超早期からの療育が盛んになってきている.当センターにおいては,多専門職によるチーム・アプローチを試みており,筆者等も言語チームとしてこれに参加している.
DS児の言語獲得期における発達像は,精神発達遅滞に由来する言語発達遅滞(Language Retardation:以下La-Rと略す)が主症状と考えられるが,一つの症候群としてその臨床像を明らかにすることには一定の意義があると思われる.特にDS児のように,乳幼児からその発達像を検討し得る場合には言語獲得の基本的条件を知る上でも重要である.さらに,DS児の言語発達像から得られた資料は,他のLa-R児の言語獲得過程の分析およびその援助にとっても必要であると思われる.そこで筆者等は,0歳期よりDown症児(以下DS児と略す)に対して当センターで実施している母親指導を中心とした超早期言語訓練の臨床経験8,12)をもとに,La-Rの一型であるDS児の乳幼児期言語発達像について検討することとした.
一般に言語発達研究は,言語受容(聴覚認知)と言語表出の二面から構成される.しかしながら,乳児期の言語発達研究は,喃語などの発声行動や発話の継時的変化に焦点を当てたものが多く,しかもそのほとんどは非統制的場面での事例研究であり,言語受容面での発達の様相は明らかにされていない9).
DS児の言語発達の遅れを検討する場合にも,前述の観点から,言語表出の遅れと同時に言語受容の遅れを明らかにする必要がある.ところが,ここでも同様に,従来の研究では発語の遅れに焦点を当てたものが多く,初期言語獲得期における言語受容面での遅れの質的な検討は少ないように思われる11).
当科では従来より,聴覚認知へのアプローチを中心とした訓練プログラムをDS児に対して実施している.今回の筆者等の報告は,この訓練プログラムの実践に基づいて,La-Rが必発とされるDS児の乳幼児期の聴覚認知を中心とした臨床像を明らかにするものである.
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