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はじめに
さまざまな障害の発見は,診断技術の発達とともに,ますます低年齢化している.言語障害を有するであろう子供達についても,でき得る限り早期に発見し,訓練を開始することは,障害をよりよく改善するための基本的な条件である.しかしながら,言語障害に関しては,超早期の訓練方法についてもさることながら,その診断についての定式化が充分ではなく,したがって,0歳代の乳児において,言語発達遅滞の程度や,言語障害の有無を的確に予測することには,まだまだ時間を要するものと思われる.
このような現状であるので,その症候からして,ほぼ均質な障害を持ち,しかも,超早期に言語障害の予測可能なDown症児(以下DS児と略す)に着目し,言語障害の超早期診断治療の手がかりについて検討することにした.
これまで,DS児については,超早期訓練の必要性が論じられ,またDS児の親達からも待望されてきたにもかかわらず,なかなか効果を得るにいたらなかったが,近年になってようやく,安藤1),Connolly等2)によって,超早期療育の有効性が指摘されるようになってきた.これらの研究は,運動の発達,言語の発達,社会性の発逮,健康の管理等,DS児の総合的な発達を目指している.1978年より,北九州市立総合療育センターでは,0歳未満の超早期DS児療育グループ(医師,看護婦,作業療法士,言語治療士)の総合的訓練を行ってきたが,本研究も,その一環として試みられてきた.
今回のDS児療育チームの言語訓練における目標としては,“始語をいかにして早期に出現させるか”,という点においた.
一般的に,言語訓練としては,言語理解,音声の表出という,受容系と運動系の二面から構成されるが,本研究では,むしろ聴覚認知の発達をうながすことで始語を導き出すこととし,よい結果を得たので報告する.
また,言語訓練を行うにあたっては,難聴の有無を前もって判断しておかなければ,その後の方法論を展開するうえで全く誤ったものになってくる.特に,DS児には,高頻度に難聴が認められるとのFution等3)の報告もあり,この点についても,本研究で同時に行った,DS児の聴力検査の解釈を含めて考察する.
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