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はじめに
障害児の発見,およびそれに引き続く訓練が,早ければ早いほど有効であることは,脳性麻痺児に対する運動訓練などの分野では,既に定着している.また,精神発達遅滞児の超早期療育についても,Down症児を中心に検討が加えられ,かなりの効果が得られている1,2).ただし,Down症のような特定疾患の場合は,超早期の発見も可能であるが,現状では特定疾患以外の乳幼児については,精神発達遅滞に伴う言語発達遅滞を判断する方法論が確立しているとは言いがたい.
現在,乳幼児期の総合的発達評価として,一般に使用されている検査には,津守・稲毛式発達検査(以下,津守式と略す),遠城寺式発達検査,Denver式発達検査,ゲゼル式発達検査など,様々あるが,いずれの場合も殊に運動障害を合併する乳幼児の発達検査としては,多くの検討の余地が残されている.低年齢に加えて表出系に障害があれば,本来持っている,様々な刺激の受容能力を推測することは,非常に難しくなってくる.そこで,このような運動障害児および運動発達遅滞児の刺激の受容能力を確かめるのに有効と思われる,音・光に対する定位反応および条件詮索反応の形成過程を調査することにした.
乳児(6か月~10か月)が,人の声に対して定位反応を示すかどうかは,その後の言語発達に影響するとのSwift Eら3)の報告がある.また,Thompson Gら4)によれば,精神発達遅滞児は,視覚的強化刺激を定位することは可能でも,純音あるいは震音を使用した場合の条件詮索反応は成立しにくいと序文で述べており,定位反応および条件詮索反応の形成過程を調査することは,精神発達遅滞に伴う言語発達遅滞を予測するうえで,一定の価値があるものと思われる.
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