特集 自閉症・アスペルガー症候群・LD・ADHD―母子保健事業の課題と期待
市町村における発達障害児(者)の早期発見,早期支援体制
平岩 幹男
1,2
1戸田市立医療保健センター
2office21kitatoda
pp.285-288
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101296
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
発達障害は医学の世界だけではなく,最近では教育の分野や一般社会でも大きな話題となっている.発達障害者支援法も施行されたが,その内容が正確に理解されているとは限らず,しばしば知的障害や運動発達遅滞などの発達遅滞や発育の障害と混同されている.筆者は発達障害とは「発達の過程で明らかになる行動,コミュニケーションや社会適応の問題を主とする障害」であると考えている.
発達障害には注意欠陥・多動性障害(ADHD)や高機能自閉症(Asperger症候群,高機能とは知的に障害がない自閉症;HFASD),学習障害などが含まれる.多くの場合,ADHDと高機能自閉症は別の疾患として扱われているが,実際には両方の側面を持つ人たちは少なくないので,この両者には連続性がある.以前に教師を対象として行った文部科学省の調査の推定では,小学生の4~6%を占めるのではないかと報告されたが,これは医学的な診断によるものではない.子どもたちから成人まで,発達障害を抱える人は多いが,わが国では社会資源の不足から,残念ながら診断すら受けていない場合も少なくない.また診断がついても適切な対応ということになるとまだまだ不十分で,どこに相談すればよいかわからないという事態もしばしば見受けられる.
発達障害者支援法では,市町村の役割として「乳幼児健康診断,学校健診で早期発見に努める.発見した場合には適切な支援を行う」とされているが,乳幼児健診は多くの市町村では3歳児健診で終わりであり,学校健診は胸部理学的所見や咽頭所見のチェックが主であり,発達障害の対応に十分な役割を果たしているとは言いがたい.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.