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はじめに
筆者の一人(上田)は約18年前に処方についていろいろの角度から論じ1),その中でリハビリテーション(以下,リハと略)における処方はチームワーク論の一環として論じられなければならないこと,処方とは医師からチームへの情報提供過程(より大きくはコミュニケーション過程)の一面であることを指摘した.医師がリハ・チームに提供しなければならない情報は,非常に多くの面にわたるので,処方以外に何らかの形(チャートの閲覧,カンファレンスでの情報交換など)で,これらの情報のすべての提供が保証されていれば処方は比較的簡単でもよいが,そうでない場合には処方自体にこれらの情報のすべてが盛り込まれていなければならないとも述べた.
その後のリハ医学・医療をめぐる状況の変化の中で,当時述べた筆者の意見の中には,現実にふさわしくない理想論・希望的観測にすぎなかったことが判明したものも少なくない2)が,上に述べた点に関しての考え方には基本的には変化はない.Okamoto3)も「医師は処方をコミュニケーションの一つの形として理解すべきである」と述べているとおりである.
Martin4)は「理学療法・作業療法が効果を発揮するためには,詳しく,十分な具体的ディテールを含んだ処方が不可欠である」と述べているが,Ruskの教科書5)の「処方の原則」の章の冒頭にあるように,他の医学専門分野における処方(主に薬剤の)に比べると,リハ医学における処方は軽視されがちである,というのも否定しがたいところであろう,わが国でも処方を正面から論じた書籍・論文はまだ比較的少ない6~9).このように,議論の積み上げ,蓄積が乏しい中で,この複雑な問題を過不足なく論ずることは非常に困難であり,論じ尽くせないところが少なからず残るであろうことをあらかじめお許しいただきつつ,今後の議論の発展のために,以下2,3の重要な問題を中心に述べることにしたい.
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