Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- サイト内被引用 Cited by
はじめに
脳卒中はわが国のリハビリテーションにおけるもっとも重要な対象疾患と考えてよいが,脳卒中リハビリテーションは現在ひとつの大きな再検討期にあるといえよう.その再検討の最大の要因は端的に言って,「遠隔地型リハビリテーション(温泉地型リハビリテーション)」から「居住地近接型リハビリテーション(都市型リハビリテーション)」へのパラダイムの転換であり,それが必ずしもスムーズに行われていないところに現在の最大の問題があるといえよう.個々のリハビリテーション・プログラムの問題もこれに起因する面が強いのである.
外来リハビリテーションは,「居住地近接型リハビリテーション」の利点の2つの柱の一つとして当初から強調されてきだ1,2).現在,居住地近接型リハビリテーションの利点のもう1つの柱である早期リハビリテーション開始の重要性についてはかなり理解されてきているが,一方の外来リハビリテーションについてはその重要性の認識はまだ十分とは言えないようである.われわれは,東京大学リハビリテーション部時代の初期から積極的に外来リハビリテーションを活用するリハビリテーション・プログラムを脳卒中に限らず行ってきた3).デュシェンヌ型筋ジストロフィー症のように家庭生活を重視する立場から外来リハビリテーションを最良と考えて行ってきた疾患とは違い,脳卒中の場合は初めは止むを得ず必要にせまられて行った面もあったが,その実際の効果を体験することにより外来リハビリテーションの重要性を確認することができ,以後は意識的にその利点を活用するようにしていった.その後,一連の脳卒中リハビリテーションの再検討の過程で作り上げてきた「早期ADL自立・早期社会復帰をめざす積極的リハビリテーション・プログラム」4)の中で,入院リハビリテーションのプログラムのあり方と外来リハビリテーションのあり方とが互いに大きく影響し合い,両者が関連しあってこそ最大限のリハビリテーション効果が得られることを確認するに至っている.
以下,脳卒中外来リハビリテーションの現状と問題点について,その根底にあると考えられる「遠隔地型リハビリテーション」と「居住地近接型リハビリテーション」のパラダイムの相異の視点から論ずることにしたい.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.