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はじめに
患者のニードを受けて医学的リハビリテーション(以下,リハビリテーションをリハと略)を開始するには,適切な障害評価(診察)に基づいたリハ処方が最初に必要になる.そして,明らかにリハ処方は医師の義務である1).
荻島2)は,リハ処方に必要な記載事項として以下の項目をあげている.すなわち,①治療の部門,②治療の頻度,③治療の行われる場所と条件,④注意事項とリスク,⑤処方の有効期限,⑥処方の目的やゴール,などである.正しい処方を行うためには,これらを正確に記載すると同時に,処方の受け手である理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などのリハ・チーム全体の力量と一人一人のPT・OTの能力(技量など)を理解した上で,実現可能なリハ・プログラムとゴール設定を,あらかじめ医師として検討しておかなければならない.それなしに不十分な処方を行うことは,医師とリハ・チームの信頼関係を損ない,リハ・プログラムの進行を妨げ,リハを阻害する原因になりかねないからである.
このようにリハ医学や障害学の理解とともに,リハ専門職の能力を理解することを前提としたリハ処方は,当然,リハ専門医の医療技術の領分である,したがって,リハ処方技術の習得と向上はリハ医学教育の重要な課題であるが,リハ処方はリハ医学全般を研修する中で学ぶべきものであり,リハ処方学だけをとりあげて問題とすることは不適当である3).
横浜市立大学医学部付属病院リハ科では,こうしたことを配慮して,以下の原則でリハ処方に関する研修をすすめてきた.すなわち,リハ科医師と整形外科医師に対しては自分でリハ処方が行えるように研修を指導し,他の科の医師へは適切な時期にリハ科へ患者を併診することを指導してきた3).リハ科医師は整形外科医師のリハ処方をチェックし承認(修正)し,他科から併診を受けた患者の障害学的評価を行い,リハ処方を作成することを基本とした.そして,他科の医師へは,リハ処方をリハ科医師に任せきりにするのでなく,評価会議などに出席して,リハ処方の承認とリハ処方への共同の責任を担うことを理解するよう指導してきた3).
しかしながら,リハ処方に関する研修を受けてきた医師によるものであっても,日常のリハ処方では記載事項の不備や不適切な処方内容が見られることも事実である.こうした医学的リハの処方に関する諸問題を明らかにするために横浜市立大学病院と関連するリハ専門病院のリハ処方を調査し,リハ依頼(処方)箋の様式,記載内容の適切さなどについて検討した.また,近年になり各方面からのニードが大きくなってきた地域リハについて,その依頼箋を同様に検討した.
なお,横浜市立大学病院のリハ処方については,1989年9月の1か月間のすべてのリハ処方を検討した.また,関連のリハ専門病院・施設のリハ処方については,担当のリハ専門医に利用目的を全く告げずに,できるだけ最近処方されたリハ依頼箋を約30件ずつ抽出することを依頼した.そして,患者の病状や障害に関する予備知識を持っていない著者(リハ専門医)が,リハ依頼箋の処方内容を分析した.
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