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はじめに
リハビリテーション(以下,リハ)医療の対象になる患者の重度化,老齢化の動向が強調されるようになって久しいが,近年ではこれに加えて重症化の傾向が著しい.この場合の重症化とは原疾患あるいは一次的合併疾患についてであり,従来言われてきた重度化が障害についてであったのとは質的に異なるものである.東大病院リハ部においても最近3~4年はこのような意味での疾患レベルの重症化の傾向が著しく,医学的管理の重要性がますます高まってきている1).
重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態(以下「ハイリスク・体力消耗状態」と略す)はこのような全般的傾向をもっとも先鋭に示す,もっとも重症な患者群であり,図1に示す入院患者の疾病分類からも明らかなように東大リハ部においてはこのような患者は急激に増加している,実数で示すと,1977年には5人,83年には4人にすぎなかったものが,84年8人,85年10人とやや増加し,その後は86年41人,87年39人,88年51人と急激な増加を示し,86年以後は常に入院患者の約2割強を占めるようになっている.
なお本論文で検討対象とした「ハイリスク・体力消耗状態」とは,ほぼ「特集にあたって」2)において述べた定義に沿っているが,この状態をもっとも典型的に示している患者群に限るためにやや範囲を限定した.すなわち,この概念には脳腫瘍や脊髄腫瘍の末期患者,神経疾患患者の臓器不全台併時なども含まれうるが,この場合には本来の運動障害が(たとえ比較的軽くても)二次的な廃用症候群を介して体力消耗を招いている可能性もあり,原疾患そのものが体力を直接に低下させているとは言い切れないので今回の対象からは除外した.また転移性悪性腫瘍でも脊椎転移による痛みのように,障害像の中核が体力低下でないものも含めなかった.一方慢性関節リウマチ等運動障害を呈する疾患では体力低下の原因が臓器不全を主とする場合は含めたが,運動障害や頚椎脱臼のために安静指示を受けたことが廃用症候群を増悪させた可能性が大きい場合は除外した.またあくまでも当部でのリハ開始時において生命の危険が極めて高いという条件を不可欠とし,既に改善傾向がありリハ開始時には生命の危険がない状態になっていれば除外した.そのため慢性臓器不全状態や既に転移が認められている悪性腫瘍患者であってもその時点において直接的に生命の危険がない場合は除外した.そのため今回の検討の対象は文献1)における“deconditioning”より対象範囲がやや狭くなっている.
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