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はじめに―問題の背景
リハビリテーション医学教育の特集にあたり,いわばそのイントロダクションとして,わが国のリハビリテーション医学教育の問題点を考えるのが筆者に与えられた課題である.
ところで本題に入る前にとりいそぎ説明を加えておかなければならないことがいくつかある.それは主に医学以外の分野でリハビリテーションに従事しておられる方方への説明であって,第1はここで論ずるリハビリテーション医学教育とは医学的リハビリテーションのすべての分野にわたる(すなわち理学療法士や作業療法士等々を含む)教育問題ではなく,もっぱら医師・医学生に対するリハビリテーション医学の教育を指しているということである.第2は医師の教育に特徴的なことといってもよいが,ふつう教育という言葉で考えられやすい学校教育は医学教育の場合は全体としての教育体系の中の前半のみを指すにすぎないということである.「卒前教育」という用語はそれを明確に示しており,後半は「卒後教育」あるいは「卒後研修」として,卒前教育同様あるいはそれ以上に重要なものとして位置づけられている.したがって医学教育を論ずる場合にはその両者へのバランスのとれた目くばりが大事だということである.最後に第3点は,事実認識の問題として,あるいは少なくともリハビリテーション医学関係者の心情的認識からみて,リハビリテーション医学に関する医学教育は医学教育全体の中でまだきわめて弱体であり,関係者にとっては焦燥感を禁じ得ないような状態だということである.
以上のことはリハビリテーション医学関係者にとっては自明の前提であり,この特集の諸論文もおそらくこれらの前提には触れずにただちにそれぞれのテーマにとりかかることと思われ,また当然それでよいのであるが,広い読者にとってはわかりにくい場合もあろうかと思われるので一言した次第である.
以下,総論・各論をとりまぜながら種々の問題点を考えていくことにしたい.
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