特集 リハビリテーション医療の問題点
患者を療養・生活の主体者にする援助
池田 信明
1
1医療法人同人会耳原鳳病院理学診療科
pp.597
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105873
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リハビリテーション医療では,機能障害・能力障害・社会的不利・心理的障害の各レベルの障害に対して総合的な援助を行う必要があることに異論はないと思われる.そして,総合的援助を早期から始める効率のよいシステムが各地で実践されだしている.しかし,そのシステムは患者を治療し回復させ自立度をたかめるという治療者・介護者からの発想から組み立てられ,患者の自己決定権を尊重し,療養・生活における主体性・自律度を向上させるという患者・障害者の立場からの発想からなっているのではないか.
ともすれば,リハビリテーション全体の課題・目標を考えるのは医療スタッフ・家族になり,患者はただ訓練にせいをだす人になってしまっている.課題設定・ゴール設定・退院先の選択も主には専門家たるスタッフの考えで行われ,情報提供・教育の主な対象は患者ではなく家族になっている.意識障害・精神機能低下・心理的問題等があるにしても,患者自身がかかえる問題の全貌を彼が理解し,スタッフの意見を参考にしながら自分なりの意見をもつように援助されていない.家族との関係でいえば,患者は被介護者であるがゆえに,退院先をふくめた退院先の生活について意見を述べうる位置にいないことが多く,医療働からそのことを考慮した本人の意志を表明させる援助が行われていない.これらのことは,一面では患者の直面する現実の困難から保護することであるが,一面では患者を半人前の禁治産者あつかいすることである.これらの援助のあり方は,リハビリテーションの原点である「全人間的復権」の立場とは異なるものである.
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