巻頭言
リハビリテーションの基軸
藤原 誠
1
1兵庫医科大学病院リハビリテーション部
pp.89
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105764
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リハビリテーションは,語源から見て,その目ざすものが秀れた調和・適応にあることは周知の通りである.これに沿った実践の中から.実践の具体的指標とも言える基軸が次々と打ち建てられて来た.
現在最大の基軸として,障害階層分類(ICIDH)に基づいた障害の理解と各階層へのアプローチをあげることができる.この分類体系は,個々の障害が最終的には人間としての権利・尊厳.すなわち,社会的生存権の問題に集約されるものであることを説いている.ICIDHが生存の役割として掲げている定位,身辺確立,移動,作業,社会参加,経済自立の各項目は生存権の具体的指標を示しているものと言える.つまり,障害の階層や種類に応じて適切にアプローチすることにより幾許かの成果があがれば,それが生存権の保障につながるという図式である.現在のリハビリテーション実践の大勢はこの基軸の上にあって復権という高潔な理想につながる活動が進められている.リハビリテーションの次元の広がりを理解し,その広がりに包括的にアプローチを進めることは非常に崇高なことではあるが,この基軸のみを頼みとするには今一つ物足りなさが残る.
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