山村地域のリハビリテーション

Rehabilitation in Mountain Village.

はじめに

　昭和30年代後半からの高度経済成長により，わが国の農業・農村は大きく変貌した．零細な自営農業は，高度経済成長下での高度な生活水準を支えるだけの農業所得を生みだせず，農外所得を求めて青壮年層は都市に流出し，農村人口は著しく減少した．また出稼ぎ労働，通勤就労などにより兼業農家が激増した．一方農業の能率化のため機械化と多薬農法が導入された．これらの過程で人口の過疎化，核家族化，高齢化が進み，高齢者や主婦への農業労働の負担が増大し，また農薬中毒や農業外傷など多くの問題を生じてきた．さらには伝統的な農村の社会的連帯の消退，兼業による家庭破壊の問題が指摘されている．そしてこれらの諸問題は「山間へき地」と称される地域で一層深刻な状況にある．

　今回は，このような背景をもった「山村地域」の自然環境と農業の概要，医療面と全村健康管理，農村に多い脳卒中とリハビリテーション（以下リハと略す），障害老人と介護者の調査について概略を述べる．