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はじめに
リハビリテーション工学(以下リハ工学と略記する)がわが国に紹介されてからすでに20年が経過した.今まで折りに触れて述べてきたように1,2),リハ工学は二つの面をもっている.すなわち,
A)ハードウエア的リハ工学
B)ソフトウエア的リハ工学
の2種である.
ところが,1970~1980年頃まではリハ工学といえば,医学関係のみならず,工学関係の大部分の人も義肢,装具,車椅子などのリハビリテーションに必要な機器を開発するための工学と解釈し,ハイテクの最先端技術をリハビリテーション領域に技術移転し,ハンディキャップをもった人達の日常生活や職場復帰を容易にできるような機器の開発や,運動分析システムを作るための各種の計測装置の開発,データ処理装置をコンピュータ化する,いわゆるハードウエア開発を中心とした学問であると認識し,かなりの期待を抱いてその成長を注視してきたように思う.
しかし,1970年に試みたリハ工学の体系化時に1)筆者はすでにソフトウエア的リハ工学の重要性を指摘しておいたにもかかわらず,当時創設された義肢装具専門研究機関が,その成果を具体的に社会にアピールし易い形をもったハードウエアを開発の対象に選び努力を集中したこと,マスコミもトピックスとして紹介するにはハードウエアの方が社会に理解させ易いということで,ソフトウエア的な面の影が薄くなったことは否定できず,リハ工学を提唱した者の一人としては残念に思うと同時に深い責任を感じている.
本稿においては,読者の再認識を促す意味を含めて,1980年以後に抬頭し始めたソフトウエア的リハ工学の現状を主として紹介し,ハードウエアの現況の紹介は簡単にして今後のリハ工学のあり方を検討する.
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