Japanese
English
特集 失調症
<症例報告>
脊髄性失調症の歩行障害に対する運動療法
Therapeutic Exercise for Gait Disturbance due to Spinal Ataxia.
前田 哲男
1
Tetsuo Maeda
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
1Central Rehabilitation Service, University of Tokyo Hospital.
キーワード:
脊髄性失調症
,
運動療法
Keyword:
脊髄性失調症
,
運動療法
pp.683-685
発行日 1986年9月10日
Published Date 1986/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105661
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
脊髄性(感覚性)失調症の運動療法としては,フレンケル体操(Frenkel exercises)が用いられている1)が多発性神経炎,シャルコ・マリー・トゥース病などの筋力低下を伴う感覚性失調症の場合,手離しでの静止立位は不可能でも,患者が楽にできるペースで足踏みを行わせれば,手離し立位が可能であったり,手離し歩行さえも可能になり,あたかも竹馬に乗って歩いているかのような歩行ができるようになる患者がいる.すなわちこれは通念に反して,動的バランスの方が静的バランスよりも比較的よく保たれていると解釈できる.このような症例に対しては,静的なバランス訓練では不十分であり,またフランケル体操で行う,立位で遊脚側下肢を床の目印へ正確に着地さすように患者に努力させながら歩く訓練も適切ではなく,むしろ動的なバランスを更に強化する訓練が重要であると思われる.
筆者は今までに10例以上の感覚性失調症患者の理学療法を担当し,以上のような考え方に基づいた運動療法を行い,理学療法開始初期には1回の理学療法時間内にでも立位・歩行バランスが改善する例が少ないことを経験しているので,そのような症例の1つを述べながら運動療法の原理と実際について述べてみたい.なお,この症例は静的バランスも必ずしも悪くなかったが,動的バランスの強化に重点をおいた訓練の効果が著明であったのでとりあげることにした.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.