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はじめに
失調症は,我々に運動における協調性,平衡機能,そして知覚機能の重要性を示してくれる.さらには,小脳機能と関連して運動学習という観点からも興味深い問題を提示してくれる.しかしながらその一方,訓練法については,さまざまな困難が存在すると言ってよいであろう.
今回は,その失調症に対する訓練というテーマについて,現状と問題点を考えてみたい.
まず,近年リハビリテーション(以下リハビリと略す)分野では,失調症についてどのような動向が見られるだろうか.
表1は,1976年から1986年4月までにリハビリテーション医学(リハ医学),総合リハビリテーション(総合リハ),Archives of Physical Medicine and Rehabilitation(APMR)に発表された論文の内,失調症関連の論文を選び出したものである.すなわち,最近10年間のリハビリ医学領域における失調症研究の概要である.ここで気づくことは,APMRにおいてはKottkeの総説的なFrom reflex to skillという論文以外に原著が全く無いということである.それに対し,リハ医学では,最近の3年間に4編の原著があり,総合リハでは,失調症(1980年),姿勢調節(1985年)という2回の特集が組まれている.つまり,失調症のリハビリに関する興味は,近年特に日本において深まりつつあると言ってよいだろう.そして,この背景には,伊藤正男,佐々木和夫,吉田充男,塚原仲晃といった我が国の研究者による小脳,基底核の秀れた仕事があると思われる25).
以下,最近のこうした進歩に照らしあわせながら,失調症の訓練における問題点,訓練法の実際について概観する.
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