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はじめに
てんかん(Epilepsy,Epiと略す)はその発生が子供から老人まで,人の一生を通じてみられ,かつその症状は神経症状と共に精神症状も多くの場合見られるので,従来は小児科医(小児神経科医)や内科医(神経内科医)ならびに精神神経科医等により,その痙攣発作をとめることに主眼がおかれ,抗痙剤投与が主として行われてきたことは周知のところである.
かつてEpiは,発作病であるという考え方が支配的であったが,近頃また発作間の状態に関心がむけられるようになってきている.このような変化は,Epiを持つ人達のリハビリテーション(リハと略す)が重要な課題として登場してきたことが関係あると思われる.さらに最近のようにリハ医学ないしは医療の知識が普及し,医療における薬づけ等社会的問題が提起されるにつれ,心身障害児者の全人間的療育の必要が高まると共に,リハ医のかかわりが大きくなってきたといえる.換言すれば,最近のEpiの治療にあたる者は,単なる痙攣のコントロールのみならず,後述する療育の概念をもって接せねばならなくなったといえる.つまりEpi医療に従事する者は,薬物療法,外科医療といった医療の他に,生活指導あるいは社会教育といったようなものを含めた,全人間的療育の知識をもったComprehensiveな治療知識が必要になってきたといえる.すなわちリハ医こそEpi医療の真の医学的実践者といえよう.与えられたテーマは「リハ医に必要なてんかんの知識」であるが,むしろ「てんかんリハ医に必要な知識」といった観点から私見を混え課題を論じ責を果してみたい.
“けいれん(発作)”と“ひきつけ”と“てんかん”について.
Epiを正しく理解する上でEpiの定義をまず述べ,“けいれん(発作)”,“ひきつけ”との区別について触れてみたい.
最近の国際てんかん連盟,WHO用語委員会によると「てんかんとは,過剰なニューロン発射に由来する自立的発作の反覆を主徴とする慢性脳疾患である.原因は種々であって単一ではない.また臨床症状や検査所見も一様ではない」といわれている1).
筋肉が発作的に自分の意志に無関係に収縮し,それに伴って運動を起こすことを“けいれん”という.特に子供に見られる全身性の発作的なけいれんを,“ひきつけ”ということもある.
“けいれん”を見た場合大切なことは,大別すると次のような二つの型別があることである.
a.強直性けいれん
筋が収縮し,一定時間持続するもので,いわゆる「足がつった」という現象等は,部分的な意味でこれに属する.全身性に起こるものは,いわゆる大発作型“てんかん”のはじめに見られる.
b.間代性けいれん
筋の収縮がくり返し断続的に起こるために体が律動的に運動する発作をいう.代表的なものは,大発作型“てんかん”発作中に見られる.
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