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まえがき
健康人の体力を表わす指標として最大酸素摂取量やAerobic Threshold,Anaerobic Thresholdなどが用いられている1,2).しかし片麻痺患者など四肢に障害を有する患者の体力測定は健康人に用いられる方法では施行困難な場合があり,測定法や体力を表わす指標が限定されてくると思われる.たとえば最大酸素摂取量の測定は不可能と思われる.Skinnerら1)によると漸増負荷運動中のエネルギー獲得過程は血中乳酸濃度の変化によって3つのphaseに分けられる.
Phase Ⅰは比較的弱い強度でこの間,酸素摂取量,換気量,二酸化炭素排泄量は直線的に増加する.しかし血中乳酸濃度はわずかの増加があるのみで主要なエネルギー源は遊離脂肪酸である.
Phase Ⅱの開始時点は換気量と二酸化炭素の排泄量の非直線的上昇および血中乳酸濃度が安静レベルから増加し始めることによって特徴づけられる.エネルギー源として脂肪の利用が減少し糖質の利用が高まる.
Phase Ⅲの開始時点は血中乳酸濃度が約4mmol/Lから急激に増加する点である.血中乳酸濃度の約4mmol/Lは定常状態の成立する最高基準とみなされ,これ以上の運動強度では乳酸は時間経過とともに増加しつづけることになり運動は無酸素性となる.
このPhase Ⅱの開始時点をAerobic Threshold,Phase Ⅲの開始時点をAnaerobic ThresholdとSkinnerらは呼んでいる.われわれの知る限りでは脳卒中後片麻痺患者を対象としたAerobic Threshold,Anaerobic Threshold測定の報告はない.そこで慢性期の脳卒中後片麻痺患者を対象としてAerobic Threshold,Anaerobic Threshold測定の可能性について検討した.
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