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まえがき
物理療法の一つとして牽引療法は重要な位置を占めているが,障害部位に応じた牽引角度や牽引重量,牽引時間などに関する事項は意外と無頓着に行われていることが多い.重要なことは障害部位に適切な牽引力が加わることであり,他部位にはできるだけ影響力が及ばないことが理想的である.牽引の一般的効果としては,1.椎間関節周囲の関節包・靱帯の伸張と筋Relaxation,2.椎間関節の離開とminor intervertebral derangement(MID)の復位,3.椎間孔の拡大化と硬膜袖近辺のクモ膜・軟膜微小癒着剥離,4.椎体前後の靱帯(前縦靱帯・後縦靱帯・翼状靱帯・蓋膜・前環椎後頭膜・前環軸膜)および棘突起近辺の靱帯(黄色靱帯・項靱帯・後頸靱帯・棘間靱帯・後環椎後頭膜・後環軸膜)の伸張,5.椎間板内圧の陰圧化と,椎体前後靱帯の伸張に伴なう膨隆髄核の復位化,6.攣縮筋の弛緩,7.脊髄動脈・静脈・リンパ液・脳脊髄液流の欝滞改善と流通促進等々がある.
一方頸椎変化を機能別に大別すると,運動髄節(motor segment)の可動性低下(hypomobility,stiffiness,fixation,hypoelasticity)と過剰可動性(hypermobility,instability,hyperelasticity)とに分けることができる.牽引の対象は可動性低下若しくは上下方向の短縮がある頸椎髄節であるべきであり,過剰可動性や弛緩伸張のある髄節に余分な体力が加わることは好ましくない.この条件をより満足に満たす方法は可動性低下髄節のみに対しmanual tractionを行うことであり,cervical columnをしっかりと把持して牽引する手技に習熟すれば決して困難なことではない.またさらに実際の臨床において間歇機械牽引を併用することは一層の効果を挙げ,労力省力化に役立つ点において意味が大である.ただ,より有効な効果を期待するためには目的髄節により有効な牽引力が加わることであり,牽引する際の角度・方向が大きな要因となる.今回筆者らはこの点に留意し検討を加えたので報告する.
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